ライブ前にアイドルが 全身黒塗りして、田舎でアルバイト！！

この作品は、ライブ前のひと時を描くユニークな企画作。アイドルという清潔感ある存在が、舞台ではない「田舎の畑」で全身に油性インクを塗り、素肌も表情も黒く染め上げる姿を追う。耕運機の音や土の匂いのなか、真っ黒な身体で動く彼女の姿は、日常と非日常が交差する奇妙な美しさを纏っている。都会的な輝きから遠ざかり、泥と汗が混ざる風景の中で、彼女は「アイドル」でありながらも別の存在へと変貌していく。まさに全身黒塗りの儀式的な美が、静かに画面を支配する。

2段落目では、登場するアイドルの艶やかで整った容姿が何より際立つ。もともときれいめで透明感のあるタイプだが、油性インクを塗り込んでいくことで、視覚的なギャップが強烈な官能へと転化する。口コミでも「顔は染みるからポスカ使用」と細部が言及されるほど、丁寧な演出が注目された。衣装が黒の層に覆われていく過程は、フェチ的にはボディペイント系の快感を軸に、“変容”そのものを味わう映像体験だ。肌の質感が消え、ただシルエットと艶の境界だけが残る。

やがて彼女は畑仕事のアルバイトへ。耕運機を操る動作で生まれる筋肉の張り、インクの光沢が汗と混じる瞬間がリアルだ。公園を歩く場面では、陽の光に照らされて黒光りする身体が、羞恥と誇示のあいだで揺れる。レビューでも「パンツも脱いでそこまで黒くするのか」という驚きが語られるように、肉体の隅々まで塗り尽くす徹底ぶりが見どころ。身体表現そのものがフェティッシュな芸術として成立し、視聴者の多くが感じた「まっくろ！」というインパクトに集約されている。

レーベル・ココアソフトらしい、奇抜ながらも繊細なフェチ企画として位置づけられる本作。演出は過激さよりも工程美を重視し、塗る・動く・光るという身体表現を丁寧に定着させる。ウェット＆メッシージャンルの中でも際立つのは、汚れや混濁の中に潜む美を真剣に可視化している点だ。碇けいいち監督ならではの実験的アプローチにより、フェティシズムがアートの領域へと昇華している。一般の変身系とは異なり、黒という色が持つ精神的支配感が、視聴後にも強烈に残る作品だ。